「5年も働いてるのに、手取り18万円って…」
熊本の回復期病院で一緒に働いていた同僚STから、そう聞いたときの衝撃は今でも忘れられません。正直、自分も似たような状況だったので、余計に胸に刺さったんですよね。
言語聴覚士の給料が上がらない。これ、単なる愚痴じゃなくて、構造的な問題があるんです。でも、同じ状況から抜け出した人もいます。僕が10年以上リハ業界にいる中で見てきた「給料を上げたSTたち」の事例と、なぜSTの年収は伸びにくいのかを、今日は本音でお話しします。
「5年目で手取り18万円」同僚STの話を聞いて愕然とした
彼女は真面目で、患者さんからの評判もよかったんです。摂食嚥下の勉強会にも自費で参加していたし、後輩の指導だってしっかりやっていた。
それなのに、5年目の給与明細を見せてもらったら、手取り18万円。
「昇給? 年に3,000円だよ」と苦笑いしていた顔が忘れられません。3,000円って、10年働いても3万円しか上がらない計算です。ボーナスを入れても年収350万円に届くかどうか。
あなたも心当たりありませんか? 頑張っているのに、給与明細の数字が全然変わらない。同期のPTやOTと比べても、なんとなく低い気がする。でも「医療職だから仕方ない」と自分を納得させている…。
僕はその後、転職して訪問リハビリの世界に入りました。環境を変えたことで、給料の「構造」がはっきり見えてきたんです。
言語聴覚士の給料が上がらない3つの構造的な問題
「頑張りが足りない」「スキルを上げろ」—— そういう精神論じゃないんですよ。STの給料が上がりにくいのは、もっと根本的な仕組みの問題があります。
診療報酬の上限が決まっている現実
リハビリの診療報酬、ご存知ですか? STが行う言語聴覚療法は1単位245点。20分で2,450円の売上です。
1日に取れる単位数は最大でも18単位(6時間)程度。つまり、どんなに頑張っても1日の売上上限は約44,000円。月20日稼働で88万円。ここから施設の運営費、他のスタッフの人件費、設備費…と引かれていくわけです。
要するに、病院側が「この人にいくら払えるか」の上限が、診療報酬で決まってしまっている。あなたがどれだけ優秀でも、売上の天井がある以上、給料にも天井がある。これが現実です。
ST自体の人数が少なく交渉力が弱い
2026年時点で、言語聴覚士の有資格者数は約4万人。一方、理学療法士は約20万人、作業療法士は約11万人います。
「人数が少ないなら希少価値があるんじゃ?」と思うかもしれません。確かに、需要はあります。でも、少人数ゆえに「ST部門」として独立した発言力を持てないケースが多いんです。
ここだけの話ですが、僕がいた病院では、リハ科の予算配分会議にSTの代表が呼ばれることすらなかった。人事評価の基準もPT寄りで、STの専門性が正当に評価される仕組みになっていませんでした。
昇給テーブルが「PT・OT・ST一律」の罠
地方の中小病院や介護施設だと、「リハビリ職」で給与テーブルが一括りになっていることが珍しくありません。
問題は、そのテーブルがPTの人数を基準に作られていること。STの専門性や、配置が難しい領域(小児・高次脳など)への評価が反映されていない。結果、「STだからといって給料が高いわけでも低いわけでもない」という、なんとも微妙な状況が生まれます。
熊本の病院を何軒か見てきましたが、ST単独の給与テーブルを持っている施設は本当に少なかった。これは地方に限った話じゃないと思います。
給料を上げたSTたちが実際にやった4つのこと
じゃあ、諦めるしかないのか? そんなことはありません。僕の周りで、実際に給料を上げたSTたちがいます。彼らが何をしたのか、具体的に紹介しますね。
転職で年収80万円アップした急性期ST
後輩の話です。彼は熊本市内の急性期病院で4年働いて、年収は320万円程度でした。
「このまま10年いても400万円いくかな…」と漏らしていた彼が、福岡の回復期病院に転職。年収400万円スタート、しかも住宅手当付き。一気に80万円アップです。
ポイントは「急性期の経験があるST」という市場価値でした。回復期や生活期の施設から見ると、急性期でバリバリやってきたSTは喉から手が出るほど欲しい人材なんです。
同じ仕事をしていても、「どこで」働くかで年収が100万円近く変わる。これ、結構ショックじゃないですか?
訪問リハビリに切り替えて手取り5万円増
僕自身の話になりますが、訪問リハビリに転職したとき、手取りは月5万円くらい増えました。
訪問は1件あたりの単価が高く、インセンティブ制を導入している事業所も多い。僕が転職したとき、最初の1ヶ月は道に迷いまくりでした。Google Mapが相棒でしたね(笑)。でも、慣れてくると自分のペースで働けるし、収入も病院時代より安定して高い。
ただ、訪問STはまだまだ少ないので、事業所によっては「STの訪問って何するの?」状態のところもあります。嚥下や構音の訪問ニーズは確実にあるので、そこを開拓できる人には向いています。
認定言語聴覚士を取得して管理職になった同期
同期で、認定言語聴覚士(摂食嚥下領域)を取得した人がいます。
資格を取ったこと自体で給料が上がったわけじゃありません。でも、「この領域の専門家です」と名乗れることで、院内での発言力が増した。NST(栄養サポートチーム)の中心メンバーになり、そこからリハ科の副主任、主任へとステップアップ。今は年収500万円を超えています。
あまり知られていませんが、管理職になると「管理職手当」がつくだけでなく、給与テーブル自体が変わる施設もあります。同じ職場でも、立場が変われば収入の天井も変わるんです。
副業でオンライン相談を始めたケース
これは少し変わった例。知り合いのSTが、オンラインで吃音の相談サービスを始めました。
本業の収入は変わらないけど、副業で月3〜5万円の収入が入るようになったそうです。「STの専門性って、病院の外でも求められてるんだな」と気づいたと言っていました。
ただ、副業禁止の職場も多いので、就業規則の確認は必須。あと、軌道に乗るまで時間がかかるので、即効性を求める人には向かないかもしれません。
完璧な方法なんてないんですよ。自分の状況に合うやり方を選ぶしかない。
「転職」という選択肢を真剣に考えるべき人の特徴
正直に言うと、給料を上げる方法として、転職が最もインパクトが大きいです。でも、誰にでも転職を勧めるわけじゃありません。
今の職場で3年以上昇給額が変わっていない
昇給額が毎年同じ、しかも3,000〜5,000円程度。これが3年以上続いているなら、その職場の給与テーブルはほぼ固定されていると思っていい。
10年後を想像してみてください。今の年収に30〜50万円足した金額。それで満足できるなら、今の職場にいる意味はあります。でも「それじゃ困る」と思ったなら、外を見る時期かもしれません。
管理職ポストが詰まっている
ST部門の主任や課長が40代で、あと15年以上はそのポジションにいそう。そんな状況なら、昇進による収入アップは望みにくい。
「待っていればいつかポストが空く」—— その「いつか」が来る保証はどこにもないです。
他県への転居も視野に入れられる
地方で働いている場合、同じ県内での転職だと選択肢が限られます。でも、県をまたげば候補がぐっと増える。
家庭の事情で動けない人もいるでしょう。それは仕方ない。でも「なんとなく地元がいい」くらいの理由なら、一度視野を広げてみる価値はあります。
逆に、転職してもあまり変わらないケースもあります。たとえば、すでに地域の平均年収以上をもらっている人。あるいは、年功序列で10年後にはかなり上がる見込みがある人。こういう場合は、無理に動く必要はないでしょう。
転職を考えるなら、STの転職に強いエージェントを使うことをおすすめします。レバウェルリハビリは、リハビリ職専門のキャリアアドバイザーがいて、STの求人も豊富に扱っています。無料登録で相談できるので、「まずは自分の市場価値を知りたい」という段階でも使えます。登録は3分で完了しますよ。
給料が上がらない状況を変えるために今日からできること
「転職なんて大げさだ」「まだそこまで考えてない」—— そう思う人もいるでしょう。それはそれで全然いいんです。
ただ、情報収集だけはしておいたほうがいい。
自分と同じ経験年数・同じ領域のSTが、他の施設でいくらもらっているのか。訪問リハビリの相場はどれくらいか。認定資格を持っている人は、どんなキャリアを歩んでいるか。
知っているだけで、「今の自分の給料が妥当なのかどうか」が分かります。その上で、動くか動かないかを決めればいい。
レバウェルリハビリに登録すると、非公開求人の情報ももらえます。「今すぐ転職したい」じゃなくても、「いい条件があれば考えたい」くらいのスタンスでOK。焦る必要はないけど、動かなければ何も変わらない。それだけは確かです。
まずは情報を集める。自分の市場価値を知る。それが、給料が上がらない状況を変える第一歩です。
よくある質問
言語聴覚士の平均年収はいくらですか?
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、言語聴覚士の平均年収は約430万円前後です。ただし、これはあくまで平均値。地域、経験年数、施設の種類によって100万円以上の差が生まれることも珍しくありません。都市部の大規模病院と地方の小規模施設では、同じ経験年数でも50〜80万円の差がつくケースもあります。
言語聴覚士は何年働いても給料が上がらない?
年功序列型の職場では、年間の昇給額が3,000〜5,000円程度にとどまることが多いです。この場合、10年働いても昇給は30〜50万円程度。管理職に就かない限り、大幅な収入アップは難しい構造になっています。ただし、転職や分野変更で一気に年収が上がるケースもあるので、「絶対に上がらない」わけではありません。
STが給料を上げるには転職しかないですか?
転職が最も即効性のある方法であることは確かです。ただ、それだけが選択肢ではありません。訪問リハビリへの分野変更、認定資格取得による管理職昇進、副業での収入確保など、複数のルートがあります。自分の状況や価値観に合った方法を選ぶことが大切です。
言語聴覚士の需要は今後どうなりますか?
高齢化の進行により、摂食嚥下障害や高次脳機能障害へのリハビリ需要は増加傾向にあります。一方でSTの供給は追いついておらず、有効求人倍率は他のリハビリ職より高い状態が続いています。当面は売り手市場が続く見込みで、条件を選べる立場にあると言えるでしょう。
地方の言語聴覚士の年収は都市部より低いですか?
一般的には、地方のほうが平均年収は低い傾向にあります。ただし例外もあります。人手不足が深刻な施設や、訪問リハビリを積極展開している事業所では、都市部と同等かそれ以上の条件を提示するケースも。「地方=低収入」と決めつけず、具体的な求人情報を確認することをおすすめします。
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この記事を書いた人
富永康太(元理学療法士)
臨床経験10年以上。現在はDOPグループ代表として、リハビリ職の転職・キャリア支援に携わる。「給料が安い」「転職が不安」——そんなPT・OT・STの悩みに、現場を知る人間として本音でお答えします。
