「言語聴覚士やめたい」と検索したあなたへ
言語聴覚士の平均年収は約423万円。看護師より100万円以上低く、同じリハ職のPT・OTと比べても若干低い傾向にある。なのに業務の専門性は高く、責任も重い。「割に合わない」と感じるのは、あなただけじゃない。
正直に言います。「辞めたい」と検索してこの記事にたどり着いたあなたは、甘えでも逃げでもない。むしろ、自分のキャリアと真剣に向き合っている証拠だと僕は思っています。
僕は元PTで、今はリハビリ職の転職・キャリア情報を発信する立場。臨床時代、熊本の回復期病院で一緒に働いていたSTさんたちの悩みもたくさん聞いてきました。「1人職場でしんどい」「PTやOTに嚥下のことわかってもらえない」「そもそも自分、STに向いてないのかも」。そんな声を何度も聞いた。
だからこそ、綺麗事は言いません。この記事では「辞めたい」と思う理由を整理して、実際にどんな選択肢があるのか、そして辞めた人たちがその後どうなったのか。僕が見てきたリアルな話をします。読んだ上で、あなた自身がどうしたいか考えてもらえたら嬉しいです。
言語聴覚士が「やめたい」と感じる5つのリアルな理由
STさんから「辞めたい」と相談を受けるとき、理由は人それぞれ。でも突き詰めていくと、だいたい5つのパターンに分かれます。
給料と業務量が見合わない
STの給料、ぶっちゃけ低いですよね。厚労省のデータによると、言語聴覚士の平均年収は約423万円。日本人の平均年収が約458万円だから、35万円ほど下回っている。10年働いても500万円に届かない人がほとんど。
去年、うちの協会の講座に来てくれたOTさんが「年収360万で10年やってきたけど、もう限界です」って言ってて。聞いてて胸が痛かった。STでも似たような話はよく聞きます。10年やって360万、しかも業務量は年々増えている。嚥下評価、高次脳機能評価、小児から高齢者まで幅広い対象。やること山積みなのに給料は上がらない。これじゃ「割に合わない」と思うのは当然じゃないですか。
成果が見えにくいストレス
PTだと「歩けるようになった」「階段が昇れた」みたいに成果が目に見える。でもSTの仕事は違う。失語症のリハビリは年単位の長期戦だし、嚥下訓練だって劇的な改善がすぐに見えるわけじゃない。高次脳機能障害なんて、本人も家族も「何が良くなったのかわからない」って言われることもある。
患者さんや家族から感謝されにくい。医師や看護師からも「STって何やってるの?」と思われがち。これ、地味にメンタルにきます。自分がやっている仕事に意味があるのか、わからなくなる瞬間がある。
職場での孤立感・理解されない
ここだけの話ですが、STが「辞めたい」と思う理由の中で、これが一番深刻だと僕は思っています。
病院によってはST1人体制のところも珍しくない。相談できる先輩もいない、同期もいない。PTやOTはチームで動いているのに、STだけポツンと孤立している。カンファレンスで発言しても「専門用語が多くてわからない」と流される。嚥下の危険性を伝えても「大げさじゃない?」と言われる。
熊本の回復期病院で働いていた後輩STが、まさにこの状況でした。「PTの主任に嚥下のリスクを説明しても全然伝わらなくて、もう疲れました」って。結局その子は2年で辞めて、訪問STに転職した。今は楽しそうにやってます。職場が変われば状況は変わる。でも、渦中にいると「どこに行っても同じ」って思っちゃうんですよね。
患者家族との関係に疲弊
「うちの父はもっと話せるはずです」「リハビリが足りないんじゃないですか」。こういう言葉、STなら一度は言われたことがあるんじゃないでしょうか。
特に失語症や認知症の患者さんの家族は、回復への期待が大きい。その期待に応えられないと感じるとき、STは自分を責めてしまう。でも医学的に限界があることも多いわけで。このギャップに苦しむ人は多い。
嚥下の分野だと「口から食べさせてあげたい」という家族の思いと、誤嚥性肺炎のリスクの間で板挟みになることも。どちらの気持ちもわかるからこそ、しんどい。
そもそもSTに向いてないかも…という不安
これ、意外と多いです。「患者さんとのコミュニケーションが苦手」「毎日同じことの繰り返しに感じる」「国試は受かったけど、臨床は全然違う」。
向いてないと感じる理由は様々だけど、僕が思うのは「向き不向き」って経験年数や職場環境でかなり変わるということ。3年目くらいまでは誰でも「自分には向いてない」と思う時期がある。5年目でまた壁がくる。これはPTでもOTでも同じ。
でも「向いてない」と感じ続けて毎日辛いなら、それは無視しちゃいけないサインかもしれない。向き不向きより、今の環境があなたに合っているかどうかを先に考えた方がいい。
辞める前に一度立ち止まって確認してほしいこと
「辞めたい」という気持ちを否定するつもりはまったくない。でも、衝動的に辞めて後悔する人も見てきたから、一度だけ立ち止まって考えてほしいことがあります。
本当に「ST」が嫌なのか「今の職場」が嫌なのか
これ、めちゃくちゃ大事。言語聴覚士という仕事自体が嫌なのか、それとも今の職場の人間関係や労働環境が嫌なのか。ここを切り分けないと、転職しても同じことを繰り返す可能性がある。
僕自身、PTを辞めたいと思った時期がありました。6年目くらいかな。当時の上司と全く合わなくて、毎朝出勤するのが憂鬱だった。でも冷静に考えたら、PTの仕事自体は嫌いじゃなかった。リハビリで患者さんが良くなる瞬間は今でも好き。結局、職場を変えたら気持ちも変わった。
「職場が変わっても解決しない問題」と「職場が変われば解決する問題」を分けて考えてみてください。給料の低さ、業務内容への不満、人間関係のストレス。どこに一番の原因があるか。
3年目・5年目の壁は誰でも経験する
リハ職には「3年目の壁」と「5年目の壁」がある。これ、あまり知られていませんが、けっこう多くの人が経験しています。
3年目は一通り仕事を覚えて「このまま続けていいのか?」と迷う時期。5年目は後輩指導やリーダー業務が増えて、プレイヤーとしての自分とマネジメントの間で揺れる時期。どちらも「辞めたい」と思いやすいタイミング。
もしあなたが今3年目か5年目前後なら、この壁を超えたら気持ちが変わる可能性もある。もちろん「壁だから我慢しろ」と言いたいわけじゃない。ただ、時期的なものかどうかは考慮に入れてもいいと思う。
あと、地方で働いている人に伝えたいんだけど、「地方だから選択肢がない」って思い込んでいませんか? 実は地方の方が転職で年収が上がりやすいケースもあるんです。熊本でも訪問リハに転職して年収80万上がった人を知っています。都市部より競争が少ない分、条件交渉がしやすい。
言語聴覚士から転職する4つの選択肢
辞めたい気持ちが固まってきたら、次は「どこに行くか」を考える段階。選択肢は大きく4つあります。
別の職場でSTを続ける(病院→訪問など)
一番現実的な選択肢がこれ。病院から訪問、急性期から回復期、成人から小児。同じSTでも職場が変われば仕事内容も環境も全然違う。
特に訪問STは年収が上がりやすい。病院勤務から訪問に移って年収50万アップした人は珍しくない。1件あたりの単価が高いし、インセンティブがつく事業所も多いから。
ただし訪問にはデメリットもある。オンコール対応がある事業所も多いし、1人で利用者宅を回るから孤独感は病院以上かもしれない。移動時間も考慮しないといけない。「訪問なら全部解決!」とは言えないのが正直なところ。
小児分野に興味があるなら、児童発達支援や放課後等デイサービスという選択肢もある。発達障害や構音障害のリハビリ需要は増えていて、STを求めている事業所は多い。
リハ職の経験を活かせる異業種へ
STの資格や経験を活かしながら、臨床以外の仕事に移るパターン。これ、意外と選択肢がある。
医療機器メーカーの営業やインストラクター。嚥下内視鏡や高次脳機能検査の機器を扱うメーカーは、現場経験のあるSTを歓迎していることが多い。福祉用具やコミュニケーションエイドの会社も同様。
補聴器メーカーはSTとの親和性が高い。認定補聴器技能者の資格を取れば、さらに活躍の幅が広がる。年収も医療機関より高いケースが多い。
あとは、介護施設の相談員や生活相談員という道もある。STの視点で利用者さんの生活をサポートできる。ケアマネ資格を取れば独立も視野に入る。
完全に別の仕事にチャレンジ
「医療・福祉から完全に離れたい」という人もいる。僕はその選択を否定しません。
実際にSTから一般企業に転職した知人がいます。彼女は営業職に転職した。最初の1年はかなり苦労したみたいで「ビジネスマナーから勉強し直した」と言ってた。でも3年経った今は「転職して良かった」と言っています。医療現場特有のストレスから解放されたのが大きいらしい。
ただ、完全異業種への転職は覚悟が必要。年齢が上がるほどハードルは高くなるし、未経験扱いになるから年収は下がることが多い。20代なら比較的チャレンジしやすいけど、30代後半以降は慎重に考えた方がいい。
一度休むという選択もあり
ちょっと話がそれますが、大事なことなので書きます。「次を決めてから辞める」が鉄則とは言われるけど、心身が限界なら先に辞めてもいい。
燃え尽きた状態で転職活動しても、いい判断はできない。貯金に余裕があるなら、3ヶ月くらい休んでリセットするのもあり。失業保険も条件を満たせばもらえる。
僕の妻も元PTなんですけど、産後の復職先を探すとき「ブランク3年あるけど大丈夫かな」ってめちゃくちゃ不安がってました。結果的にはクリニックで週3パートから始めて、今はフルタイムに戻ってます。ブランクがあっても、STは売り手市場だから復帰しやすい。焦って決める必要はない。
転職を決意したら最初にやるべきこと
転職を決めたら、まず情報収集から始めましょう。ここでの動き方で、転職の成功率はかなり変わります。
在職中に情報収集だけは始めておく
絶対にやってほしいのが「在職中に」転職活動を始めること。辞めてから探すより、在職中の方が圧倒的に有利です。
理由はシンプル。「今の職場で働きながら、より良い条件を探している」と「無職の状態で焦って探している」では、交渉力が全然違う。企業側から見ても、在職中の人の方が「ちゃんと働ける人」という印象を持たれやすい。
「でも忙しくて転職活動する時間がない」という人もいると思う。だからこそ、転職エージェントを使うんです。求人を探してくれる、面接日程を調整してくれる、条件交渉もしてくれる。忙しい在職者にとって、これはかなり助かる。
リハ職専門のエージェントを使う理由
転職サイトは山ほどあるけど、STの求人を探すなら絶対にリハ職専門のエージェントを使った方がいい。
一般の転職サイトだとST求人は驚くほど少ない。リクナビNEXTとかdodaで「言語聴覚士」と検索してみてください。全国で数十件しか出てこないはず。PT求人の10分の1以下。これじゃ選択肢が広がらない。
マイナビコメディカルはリハ職に特化しているから、STの求人も豊富に扱っている。しかも非公開求人が多いのがポイント。好条件の求人ほど公開されずに、エージェント経由でしか紹介されないケースが多い。
地方でもST求人がしっかりあるのも助かる。熊本みたいな地方だと「求人自体がない」と思われがちだけど、実際は訪問リハや老健、小児分野で人手不足のところは多い。ただ表に出てきてないだけ。
登録は無料で3分程度で終わる。すぐに転職しなくても、とりあえず登録しておいて「どんな求人があるか」だけ見ておくのもあり。情報を持っているだけで、気持ちに余裕ができます。
「辞めたい」と思っている今の状態で、選択肢が見えないのが一番辛い。まずは選択肢を広げることから始めてみてください。
実際にSTを辞めた人たちのその後
「辞めたらどうなるんだろう」という不安は誰でもある。だから、僕が知っている実例をいくつか紹介します。
まず、訪問STに転職したAさん(30代女性)。回復期病院で5年働いて、人間関係と年収の低さに嫌気がさして転職。訪問に移ってから年収は50万アップ。「1人で動くから孤独かと思ったけど、逆に変な人間関係のストレスがなくて楽」と言ってました。ただ「体力的には病院より大変」とも。移動が多いから、夏場は特にしんどいらしい。
次に、補聴器メーカーに転職したBさん(20代男性)。病院勤務3年目で「臨床がどうしても合わない」と感じて異業種へ。最初は営業ノルマに苦戦したけど、STの知識が活きる場面も多くて、今は楽しそうにやってます。年収は病院時代より100万近く上がったとのこと。
一方で、後悔している人もいる。完全異業種に転職したCさん(30代女性)は「やっぱりSTに戻りたい」と言ってました。一般企業で働いてみたけど「患者さんと関わる仕事が恋しくなった」と。今は訪問STとして復帰準備中。まさに転機。
あと、以前Twitter(今のX)で「PTの給料安すぎ問題」についてポストしたら600件以上リプが来て、みんな同じこと思ってるんだなと実感しました。STの人からも「同じです」「辞めたいけど辞められない」という声がたくさん来た。
辞めたから人生終わりなんてことは絶対にない。でも、辞め方と辞めた後の行動で結果は変わる。だからこそ、情報収集と準備は大切。
まとめ
「言語聴覚士を辞めたい」と思うのは、真剣に仕事と向き合っているからこそ。その気持ちは否定しなくていい。ただ、衝動的に辞めるのではなく、今の不満が「職場の問題」なのか「ST自体の問題」なのかを見極めてから動いた方がいい。選択肢は転職だけじゃなく、休む選択もある。まずは在職中に情報収集を始めて、自分にとってベストな道を探してください。
よくある質問
言語聴覚士を辞めたいけど3年は続けるべき?
「3年は続けろ」に明確な根拠はありません。ただし1年未満での退職は、次の面接で理由を聞かれやすい。とはいえ心身を壊すくらいなら、3年待つ必要はない。僕の知人にも1年で転職して成功した人はいます。
STから一般企業に転職できる?
できますが、未経験扱いになることが多いです。医療機器メーカーや補聴器会社、福祉系企業ならST経験が活きやすい。完全異業種は年齢が上がるほどハードルが高くなるので、20代のうちが動きやすいです。
言語聴覚士の資格は転職後も使える?
医療・福祉業界なら評価されます。補聴器や福祉用具の会社、介護施設など。一般企業でも健康経営に力を入れている会社なら、専門資格としてプラスに見てもらえることもあります。
辞めたいけど次が見つかるか不安
STは求人倍率が高く、完全な売り手市場です。特に訪問分野や小児分野は人手不足。在職中に転職活動を始めれば、次が決まらないリスクはかなり低い。焦らず、条件の良いところを選んでください。
この記事を書いた人
富永康太(元理学療法士)
臨床経験10年以上。現在はDOPグループ代表として、リハビリ職の転職・キャリア支援に携わる。「給料が安い」「転職が不安」——そんなPT・OT・STの悩みに、現場を知る人間として本音でお答えします。
