「給料が高ければ成功」という誤解が転職失敗の入り口
転職活動を始めるとき、年収アップを第一目標にする人は多い。でも、その考え方が転職失敗への入り口になっていることがあります。
年収50万アップで転職したOTが3ヶ月で辞めた話
以前、同じ法人で働いていたOTのAさん(30代女性)が、年収50万円アップの条件で急性期病院へ転職しました。「やっと給料上がる!」と喜んでいたのを覚えています。
ところが、3ヶ月後に連絡が来た。「辞めたい」と。
理由を聞くと、こんな状況だったそうです。
- 毎日2時間以上の残業が当たり前(しかも申請しにくい雰囲気)
- 先輩OTとの関係がうまくいかず、相談できる人がいない
- 通勤時間が片道1時間に増えた
年収は確かに上がった。でも、時給換算したら前職より下がっていたんです。
結局Aさんは半年で退職。次の転職活動では「短期離職」の説明に苦労していました。給料だけを見て飛びついた結果がこれです。
給料だけで選ぶと見落とす「隠れコスト」とは
求人票に書いてある年収は、あくまで表面上の数字でしかありません。実際には、目に見えない「隠れコスト」がたくさんある。
具体的には…
- 通勤時間の増加(1日往復2時間×20日=月40時間のロス)
- 自費での勉強会・研修会参加(年間5〜10万円かかることも)
- 持ち出し業務(自宅での書類作成、自己学習)
- 駐車場代、ガソリン代の自己負担
- 見えない精神的コスト(人間関係のストレス)
熊本から福岡に転職したOTの話を聞いたことがあります。年収は80万円上がったけど、高速代とガソリン代で月3万円、年間36万円。差し引きで実質44万円アップ。悪くはないけど、毎日の高速通勤で疲弊して、1年半で熊本に戻ってきました。
年収だけ見ていると、こういう落とし穴にはまる。心当たり、ありませんか?
作業療法士が転職で失敗する5つのパターン【現場で見てきた実例】
10年以上この業界にいると、転職で失敗する人には共通パターンがあることに気づきます。自分自身も含め、周囲で見てきた実例をもとに、典型的な5つの失敗パターンを紹介します。
①「とりあえず辞めたい」で動いてしまう
「もう無理。とにかく今の職場を離れたい」
この気持ち、すごく分かります。でも、この状態で転職活動を始めると高確率で失敗する。
なぜなら、「辞めること」がゴールになってしまうから。次の職場に求める条件があいまいなまま、「今より良さそう」という理由だけで決めてしまう。結果、同じような不満を抱えて再び転職…というループに入る人を何人も見てきました。
まず深呼吸して、「なぜ辞めたいのか」「次の職場で絶対に譲れない条件は何か」を紙に書き出してみてください。それだけで、かなり冷静になれます。
②求人票の文言を鵜呑みにする
求人票に書いてある言葉、どこまで信じていますか?
「アットホームな職場です」→ 実態:人が少なくて一人何役もやらされる
「残業少なめ」→ 実態:申請しにくいだけで実際は残業だらけ
「充実した教育体制」→ 実態:資料を渡されて「読んでおいて」で終わり
全部が嘘とは言いません。でも、求人票は「応募してもらうための広告」だということは忘れないでほしい。
特に気をつけたいのが「月給◯万円〜」という表記。下限の金額で入職するケースがほとんどです。上限が高くても、そこまで到達するのに何年かかるか、そもそも到達できるのか、確認が必要。
③見学・面接で質問しない
見学や面接で「何か質問ありますか?」と聞かれて、「特にありません」と答えていませんか?
これ、本当にもったいない。
見学・面接は、あなたが職場を「見定める」貴重な機会です。質問しないということは、相手が見せたいものだけを見て判断するということ。入職後に「こんなはずじゃなかった」となる原因の多くは、ここにあります。
「聞いたら印象悪くなるかも」という心配は分かる。でも、まともな職場なら、質問する応募者を嫌がったりしません。むしろ、何も聞かない人のほうが「本当にうちで働きたいのかな?」と思われることもある。
④今の職場への不満だけが転職理由
面接で転職理由を聞かれたとき、不満ばかり出てきませんか?
- 「上司と合わなくて…」
- 「給料が低くて…」
- 「残業が多くて…」
これらが本音だとしても、「不満の解消」だけが動機だと、採用側は不安になります。「うちでも同じように不満を持つのでは?」と。
大事なのは、不満を「希望」に変換すること。
「上司と合わない」→「チームで協力しながら働ける環境で力を発揮したい」
「給料が低い」→「自分のスキルに見合った評価を受けたい」
言い方ひとつで印象は変わります。
⑤入職時期を焦りすぎる
「4月入職に間に合わせたい」「ボーナスもらってすぐ辞めて、次の夏のボーナスももらいたい」
タイミングを意識すること自体は悪くない。でも、時期に縛られすぎると、妥協した転職になりがちです。
特に年度末の転職市場は要注意。4月入職に向けて求人は増えるけど、応募者も増える。焦って「ここでいいか」と決めてしまい、入職後に後悔するケースを何度も見てきました。
理想は、「良い求人があれば転職する」くらいの余裕を持つこと。今の職場で最低限やっていける状態なら、焦る必要はありません。
「経験年数が浅いと転職できない」は本当か?
「3年は働かないと転職できない」「経験浅いと相手にされない」。こういう話、よく聞きますよね。でも、実際の転職市場を見ていると、必ずしもそうとは限りません。
2〜3年目OTの転職市場での実際の評価
結論から言うと、2〜3年目でも転職は十分可能です。
採用側が見ているのは「経験年数」だけじゃない。「何ができるか」「どんな姿勢で働くか」「職場に馴染めそうか」。こういった要素を総合的に判断しています。
むしろ、「10年以上のベテランより、若手のほうが欲しい」という施設も増えている。理由は単純で、給料が抑えられるから。それに、変な癖がついていないぶん、教育しやすいという見方もあります。
…とはいえ、経験年数よりも大事なことがある。
それは「自分のスキルを客観視できているか」です。3年未満で転職する人に多いのが、「自分は一通りできる」という過信。実際に転職先で「基本ができていない」と評価されて、人間関係がこじれるケースを見たことがあります。
むしろ若手が有利な求人の特徴
若手OTが歓迎される求人には、いくつかパターンがあります。
- 訪問リハビリ事業所(体力勝負の面があるため若手歓迎)
- 新設の施設・病院(ゼロから組織を作りたいので柔軟な人材が欲しい)
- OTが少ない職場(とにかく人手が欲しい)
- 教育体制が整っている大手法人(育てる余裕がある)
逆に、「即戦力」「経験◯年以上」と明記されている求人は、若手には厳しい。素直に避けたほうがいいでしょう。
熊本で働いていた頃、県外から転職してきたPTが「都会より患者さんとの距離が近くてやりがいがある」と話していたのが印象的でした。その人は3年目での転職だったけど、「経験年数より、ここで何をしたいかが大事」と言っていた。その通りだと思います。
地方OTの転職失敗には「都市部と違う理由」がある
ネットで見かける転職ノウハウは、ほとんどが都市部を前提にしています。でも、地方で働くOTにとっては、当てはまらないことも多い。熊本で10年以上働いてきた立場から、地方ならではの落とし穴を伝えます。
求人が少ない地域での選び方の落とし穴
地方の転職市場は、そもそも求人数が少ない。
熊本県で「作業療法士」の求人を検索しても、常時出ているのは数十件程度。そのうち条件が合うものとなると、さらに絞られる。選択肢がないから、「ここしかない」と思って応募してしまう。
これが落とし穴です。
少ない選択肢の中から選ばざるを得ないのは事実。でも、「他にないから」で決めた転職は、入職後に必ず後悔します。
対策としては、求人が出るタイミングを見計らうこと。地方の求人は、年度替わり(1〜3月)に集中する傾向があります。その時期に向けて、半年前くらいから情報収集を始めておくのがベスト。
熊本で見た「狭い業界」ならではの失敗例
地方のリハビリ業界は、想像以上に狭い。
転職先の面接官が、前職の先輩の同期だった。退職理由が前の職場経由で転職先に伝わっていた。こんな話、熊本では珍しくありません。
ある後輩OTは、前職での評判が良くなかったせいで、県内の複数の病院から不採用をくらっていました。「なんで落ちるか分からない」と言っていたけど、理由は明らかでした。
地方で転職するなら、「狭い業界」を意識した行動が必要です。
- 前職を円満退職する(引き継ぎをしっかり、悪口を言わない)
- 学会や研修会での振る舞いに気をつける(ここで人柄が見られている)
- 転職活動中であることを軽々しく言わない
情報収集も、地方ならではの方法があります。求人サイトだけでなく、研修会で知り合った他施設のセラピストから「うちの職場、こんな感じだよ」と聞くのが、実はいちばん正確な情報だったりする。
転職失敗を防ぐための具体的なチェックリスト
ここまで失敗パターンを見てきましたが、では具体的にどうすればいいのか。実践的なチェックリストを紹介します。
求人応募前に確認すべき7項目
応募ボタンを押す前に、以下の7項目を確認してください。
- OTの配置人数と担当患者数の比率(1人あたり何人担当するか)
- 直近1年間の退職者数(高いと何か問題がある可能性)
- 有給消化率(取れる雰囲気かどうかの指標)
- 残業時間の実態(月平均で何時間か、申請しやすいか)
- 昇給・賞与の実績(「業績による」だけでなく具体的な数字を)
- 教育体制の具体的内容(プリセプター制度、勉強会の頻度など)
- 通勤経路と所要時間(実際に通勤時間帯で計算する)
これらの情報は、求人票に書いていないことがほとんど。だから、見学や面接で確認する必要があります。
見学・面接で必ず聞くべき質問3つ
「聞きにくいけど、聞かないと後悔する」質問を3つ厳選しました。
①「直近で退職された方の理由を教えていただけますか?」
これを聞くと、職場の問題点が見えてくることがあります。「キャリアアップのため」と言われれば安心。「人間関係で…」と言葉を濁されたら要注意。
②「入職後、最初に任される業務はどのようなものですか?」
「いきなり担当を持ってもらいます」なのか、「最初の1ヶ月は先輩について見学です」なのか。フォロー体制が分かります。
③「1日のスケジュールを具体的に教えていただけますか?」
実際に働いているスタッフに聞けるとベスト。カルテ入力の時間が確保されているか、昼休憩はちゃんと取れるか、リアルな実態が見えます。
質問する際は、「御施設で長く働きたいと思っているので、実態を知っておきたい」と前置きすると、角が立ちにくいです。
内定後〜入職までにやるべきこと
内定が出たら安心してしまいがちですが、ここでも確認すべきことがあります。
- 雇用契約書の内容確認(求人票と違う条件になっていないか)
- 試用期間の条件(期間中の給与、解雇条件)
- 入職日と退職日の調整(空白期間を作らない)
- 社会保険の切り替えタイミング(手続きに漏れがないように)
特に雇用契約書は、必ず「求人票」「面接で聞いた内容」と照らし合わせてください。違っていたら、入職前に確認する権利があります。「契約書にサインしたら終わり」ではない。納得できなければ、交渉すべきです。
ただ、一人でこれらをすべて確認・交渉するのは正直しんどい。そんなとき、転職エージェントを使うと、代わりに確認・交渉してもらえます。リハ職に特化したレバウェルリハビリなら、こうした細かい条件交渉もサポートしてくれるので、一人で不安な人は無料登録だけでもしておくと安心です。
一人で転職活動すると失敗しやすい理由と対策
「転職サイトで求人を見て、自分で応募すればいいや」。そう思っていませんか?もちろん、それでうまくいく人もいます。でも、一人での転職活動には落とし穴があるんです。
情報格差が生む判断ミス
転職活動で最も重要なのは「情報」です。
でも、一人で集められる情報には限界がある。求人票に書いてあること、ネットの口コミ、見学で見たこと。これだけで職場の実態を判断するのは難しい。
例えば、「残業少なめ」と書いてある職場が、実際はどうなのか。「人間関係が良い」という口コミが本当なのか。表に出ない情報は、一人では手に入りません。
この「情報格差」が判断ミスを生む。良さそうに見えた職場が実はブラックだったり、逆に、求人票がパッとしなくても実は働きやすい穴場だったり。情報がないと、見極められません。
転職エージェントを使うメリット・デメリット
情報格差を埋める手段のひとつが、転職エージェントの活用です。正直に、メリットとデメリットを伝えます。
メリット:
- 求人票に載らない内部情報を教えてもらえる
- 年収交渉を代わりにやってくれる
- 履歴書・職務経歴書の添削が受けられる
- 面接対策のアドバイスがもらえる
- 見学日程の調整など、面倒な手続きを任せられる
デメリット:
- 紹介手数料の関係で、特定の求人を勧められることがある
- 担当者との相性が合わない場合がある
- 自分のペースで進めにくいことも
デメリットがあるのは事実。でも、リハ職専門のエージェントなら、業界の事情を分かっているぶん、的外れな求人を勧められるリスクは低い。
レバウェルリハビリは、PT・OT・STに特化した転職サービスで、病院・施設の内部情報を持っているのが強み。「この病院、実際の残業時間はどうですか?」みたいな質問にも答えてくれます。登録は3分で完了、相談だけでもOKなので、情報収集の手段として使ってみる価値はあります。
もちろん、エージェントを使うかどうかはあなた次第。ただ、「一人で全部やらなきゃ」と思い込む必要はないということは、覚えておいてください。
よくある質問
Q: 作業療法士の転職で後悔する人の割合はどのくらい?
A: 明確な統計データはありませんが、リハ職の約3割が転職後1年以内に「思っていたのと違う」と感じるという調査結果もあります。後悔の原因として最も多いのは情報収集不足。求人票だけで判断せず、見学や面接でしっかり確認することが重要です。
Q: 転職して1ヶ月で辞めたくなったらどうすべき?
A: まずは3ヶ月程度は様子を見ることをおすすめします。最初の1ヶ月は環境に慣れる期間なので、違和感があるのは当然。ただし、雇用契約書の内容と実態が明らかに違う場合や、ハラスメントがある場合は、早期退職も選択肢に入れてください。次の転職時に説明できるよう、問題があった事実を記録に残しておくことが大切です。
Q: 転職失敗したら次の転職は不利になる?
A: 短期離職が2回以上続くと、採用側から警戒されやすくなります。ただし、1回の短期離職であれば、理由次第で問題ありません。「前職の何が合わなかったのか」「次の職場では何を大切にしたいのか」を言語化できれば、むしろ自己理解が深い人として評価されることもあります。
Q: 作業療法士は転職回数が多いと採用されにくい?
A: 回数そのものより、「理由の一貫性」が重視されます。「専門性を高めるため」「より患者さんに近い現場で働くため」など、キャリアの軸が一貫していれば、転職回数が4〜5回でも問題ないケースはあります。逆に、2回の転職でも理由があいまいだったり、ネガティブな理由ばかりだったりすると、マイナス評価につながります。
まとめ
転職で失敗する人には共通パターンがある。給料だけで判断する、情報収集が足りない、焦って決める。でも、これらは事前に知っておけば避けられます。大事なのは「辞めること」をゴールにしないこと。あなたが本当に求める働き方は何か、まずそこから考えてみてください。
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この記事を書いた人
富永康太(元理学療法士)
臨床経験10年以上。現在はDOPグループ代表として、リハビリ職の転職・キャリア支援に携わる。「給料が安い」「転職が不安」——そんなPT・OT・STの悩みに、現場を知る人間として本音でお答えします。
