「言語聴覚士の転職は難しい」は半分ウソ、半分ホント
「STって求人少ないから、転職は厳しいよね」——この言葉、何度聞いたことか。でも正直に言うと、この認識は半分ウソで半分ホントです。まずは、なぜ「難しい」と言われるのか整理してみましょう。
難しいと言われる3つの理由をまず整理する
言語聴覚士の転職が難しいとされる理由は、大きく3つあります。
- 求人数がPT・OTより圧倒的に少ない:大手求人サイトで検索すると、PTが5,000件以上あるのにSTは1,500件程度。この差を見れば「選択肢がない」と感じるのも無理はない
- 配置基準が曖昧で採用枠が限られる:回復期リハでもSTは1〜2名配置が多く、そもそも空きが出にくい構造
- 専門領域が細分化されている:小児・嚥下・失語・高次脳機能など、経験領域と求人側のニーズがマッチしないと選考で不利になりやすい
ここまで聞くと「やっぱり難しいじゃん」と思うかもしれません。でも、ちょっと待ってください。
実際のところ、転職成功率はどれくらい?
僕が見てきたSTの同僚や知人の転職事情を振り返ると、本気で動いた人の8割以上は半年以内に転職を決めています。難しいと言いつつ、実際に「転職できなかった」というケースはほとんど聞いたことがない。
以前、一緒に働いていた4年目のSTが「回復期から訪問に移りたい」と相談してきたことがあります。彼女は熊本市内で訪問ST求人を探していましたが、求人サイトでは2〜3件しか見つからず、かなり落ち込んでいました。ところが、転職エージェントに登録したら非公開求人を5件紹介されて、結局2ヶ月で内定。年収も30万円アップでした。
要するに、STの転職は「難しい」というより「コツがいる」が正解。探し方と準備次第で、状況は大きく変わります。
よくある誤解①「ST求人は少ないから選べない」→実は〇〇が原因
「求人が少ない」と嘆く前に、ひとつ確認してほしいことがあります。あなたが見ている求人、それは「表に出ている求人」だけではありませんか?
求人数が少なく見える本当の理由
ST求人が少なく見える原因は、実はシンプル。一般的な求人サイトに掲載されにくい構造になっているからです。
PT・OTと違って、STは1施設あたりの採用人数が少ない。だから大量採用を前提とした求人広告を出すメリットが薄く、非公開で募集をかけるケースが多いんです。特に訪問リハや小児分野は、エージェント経由でしか募集していない求人がゴロゴロあります。
実際、マイナビコメディカルの担当者に聞いた話では、「ST求人の約4割は非公開求人」だそうです。求人サイトで見える数だけで判断すると、選択肢を半分近く見逃している計算になります。
非公開求人を知らないと損する話
熊本で転職活動をしていたSTの後輩から聞いた話を紹介します。
彼は求人サイトだけで探して「やっぱり地方は無理だ」と諦めかけていました。でも僕が「エージェントも使ってみたら?」と勧めたところ、登録後1週間で3件の非公開求人を紹介されたそうです。そのうち1件は、彼が以前から気になっていた介護老人保健施設のST募集でした(求人サイトには一度も掲載されていなかった)。
「求人が少ない」と感じたら、まず非公開求人にアクセスできる状態を作る。これだけで見える景色がかなり変わりますよ。
よくある誤解②「経験が浅いと転職できない」→むしろチャンスな場合も
1〜3年目のSTから「経験が浅いから転職は無理ですよね?」と聞かれることがあります。心当たりありませんか?
1〜3年目でも転職できる理由
結論から言うと、1〜3年目でも転職は十分可能です。むしろ、採用側が「育成前提」で若手を求めているケースも少なくありません。
STは全国的に人材不足が続いています。特に訪問リハや介護施設では「経験豊富なSTを待っていたら永遠に採用できない」という状況。だから「3年目でもポテンシャルがあれば採用したい」という施設は意外と多いんです。
ある先輩PTが「転職は3年目か5年目がベストタイミングだ」と言っていて、実際にそのタイミングで動いた人は皆うまくいってました。3年目というのは、基礎スキルが身についた頃で、かつ次の環境への適応力もある時期。採用側から見ても「育てがいがある」と思われやすいタイミングなんですよね。
経験年数より大事な「アピールすべきポイント」
採用担当者が見ているのは、経験年数よりも「何ができるか」「何を学んできたか」です。具体的には、以下のような経験を棚卸ししておくと強い。
- 担当した疾患・領域(脳卒中の失語症を◯名担当、嚥下障害の評価を◯件実施など)
- 他職種との連携経験(カンファレンスでの発言、ケアマネとの情報共有など)
- 勉強会や症例発表の経験
- 後輩指導やプリセプターの経験
「たった2年しか経験がない」ではなく、「2年間でこれだけの経験を積んだ」と言い換えられれば、印象は180度変わります。
よくある誤解③「地方はST求人がない」→探し方を間違えているだけ
熊本在住の僕からすると、「地方はST求人がない」という嘆きはよく聞きます。でも実際は、探し方を知らないだけのケースがほとんど。
地方でST求人を見つける3つのルート
地方でST求人を探すなら、以下の3ルートを併用するのが鉄則です。
- ハローワーク:地域密着型の小規模施設はハローワークにしか出さないことも多い。週に1回はチェックしておきたい
- 転職エージェント:非公開求人にアクセスできるのが最大のメリット。地方でもST専門のエージェントなら、意外な求人を持っている
- 直接応募:気になる施設があれば、採用ページを確認するか、直接電話してみる。「今は募集していないけど、いい人がいれば採用したい」という施設は結構ある
どれか1つに絞るのではなく、3つ全部やる。これが地方転職のコツです。
熊本で転職成功したSTの実例
僕の知人で、熊本市郊外から市内への転職を成功させたSTがいます。彼女は回復期病院から訪問リハステーションに転職しましたが、求人サイトでは「希望エリアの訪問ST求人ゼロ」という状況でした。
でも彼女は諦めずに、エージェント2社に登録しつつ、地元のクリニック併設のリハステーションに直接問い合わせ。結果的に、直接応募した施設から「ちょうどSTを探していた」と返事があり、トントン拍子で内定。年収は350万から400万に上がったそうです(手取りだと約310万)。
地方だからこそ、1つのルートに頼らず、複数の手段を組み合わせることが重要なんです。
STの転職を「難しくしない」ための具体的な5ステップ
ここまで読んで「じゃあ具体的に何をすればいいの?」と思った方へ。転職を成功させるための5ステップを紹介します。
STEP1:自分の強みを3つ言えるようにする
まず、面接で聞かれても即答できるように、自分の強みを3つ整理しておきましょう。
よくある失敗は「強みがわからないので、考え中です」と言ってしまうこと。これでは採用側も判断しようがありません。嚥下評価の件数、小児訓練の経験、他職種連携のエピソードなど、具体的な数字やエピソードとセットで準備しておくと説得力が増します。
STEP2:希望条件に優先順位をつける
年収、勤務地、勤務時間、残業の有無、領域……。希望条件を全部満たす求人は、まず存在しません。
だから「絶対に譲れない条件」と「できれば欲しい条件」を分けておく。例えば「年収は最低350万以上(絶対条件)」「残業は少ないほうがいい(希望条件)」という具合です。これをやっておくと、求人を絞り込むスピードが格段に上がります。
STEP3:ST専門のエージェントを最低2社使う
エージェントは1社だけだと、担当者との相性やそのエージェントが持つ求人に左右されます。最低でも2社、できれば3社に登録しておくのがベスト。
ST求人を多く扱っているという点では、マイナビコメディカルはおすすめです。求人数が多いだけでなく、非公開求人も豊富で、地方でも対応してくれます。登録は無料で3分程度で完了するので、まずは情報収集のつもりで登録しておくといいですよ。
STEP4:職場見学は必ず申し込む
求人票だけでは分からないことが多すぎます。雰囲気、人間関係、実際の業務量……これらは見学しないと把握できません。
「見学を申し込んだら採用に不利になるのでは?」と心配する人もいますが、むしろ逆。見学を申し込む人は「本気度が高い」と評価されることが多いです。遠方で見学が難しい場合は、オンライン面談で施設の様子を聞くだけでも違います。
STEP5:内定後の条件交渉を忘れない
内定が出たら、条件交渉のチャンスです。特に年収交渉は、このタイミングでしかできません。
自分で交渉するのが苦手なら、エージェントに代わりに交渉してもらうのも手。実際、僕の知人は自分で言い出せなかった給与交渉をエージェント経由で依頼し、年収が20万円アップした例もあります。
転職エージェントを使うかどうか迷っている人へ
「エージェントって本当に使ったほうがいいの?」という質問もよく受けます。正直に言うと、向き不向きがあります。
エージェントを使うメリット・デメリットを正直に
メリット
- 非公開求人にアクセスできる
- 履歴書・職務経歴書の添削をしてもらえる
- 面接対策や条件交渉を代行してくれる
- 自分の市場価値を客観的に把握できる
デメリット
- 担当者との相性が合わないことがある
- 希望と違う求人をゴリ押しされる場合も
- 連絡が頻繁で煩わしいと感じる人もいる
デメリットについては、複数のエージェントに登録しておけばリスクを分散できます。合わない担当者がいたら、別のエージェントをメインにすればいいだけですから。
自分で探すのが向いている人・エージェント向きな人
自分で探すのが向いている人
- 行きたい施設がすでに決まっている
- 人材紹介を使わない施設を狙っている
- 自分のペースでゆっくり探したい
エージェント向きな人
- 求人を探す時間がない
- 条件交渉や面接対策に不安がある
- 非公開求人を含めて選択肢を広げたい
- 自分の市場価値がわからない
STは求人数がPT・OTより限られる分、非公開求人へのアクセスが重要になります。そういう意味では、エージェントを使うメリットは大きいと言えるでしょう。
どのエージェントがいいか迷ったら、まずはマイナビコメディカルに登録しておくのが無難です。リハビリ職専門で、ST求人の取り扱いも多い。無料で相談できるので、登録だけしておいて損はありません。
よくある質問
言語聴覚士の転職で有利になる資格はありますか?
認定言語聴覚士や摂食嚥下認定士は、持っていればプラス評価になります。ただし、必須ではありません。採用側が重視するのは、どちらかというと経験領域です。「小児の経験が3年ある」「嚥下評価を年間100件以上やってきた」といった実績のほうが、資格よりも評価されることが多いです。
言語聴覚士が転職で年収アップするコツは?
現実的な方法は3つあります。まず、訪問リハや管理職ポジションを狙うこと。次に、地域手当の高いエリア(都市部)を選ぶこと。そして、複数の内定を取って条件交渉すること。特に3つ目は効果が大きく、「他にも内定がある」と伝えるだけで年収が20〜30万円上がるケースもあります。
STは何年目で転職するのがベスト?
一般的には3〜5年目で転職する人が多いです。ただ、正直なところ「何年目か」より「何のために転職するか」のほうが重要。キャリアアップなのか、ワークライフバランスなのか、人間関係のリセットなのか。目的が明確なら、1年目でも10年目でも転職のタイミングとしては正解です。
言語聴覚士から一般企業への転職はできる?
可能ですが、求人数はかなり限られます。医療機器メーカー(補聴器、嚥下関連機器など)や福祉系IT企業への転職事例はあります。ただし、一般の求人サイトでは見つけにくいので、エージェント経由で探すのが現実的。リハビリ職専門のエージェントなら、こうした異業種求人の情報を持っていることもあります。
まとめ
言語聴覚士の転職は「難しい」のではなく「コツがいる」だけ。非公開求人にアクセスし、自分の強みを言語化し、複数のルートで探す。この3つを押さえれば、地方でも経験が浅くても、転職成功の可能性は十分にあります。まずは情報収集から始めてみてください。
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この記事を書いた人
富永康太(元理学療法士)
臨床経験10年以上。現在はDOPグループ代表として、リハビリ職の転職・キャリア支援に携わる。「給料が安い」「転職が不安」——そんなPT・OT・STの悩みに、現場を知る人間として本音でお答えします。
