「もう限界かも。仕事行きたくない」
先週、熊本で一緒に働いていた元同僚のOT、佐藤さん(仮名)からLINEが来ました。回復期病院で5年目。真面目で患者さん思いの、いいセラピストだったんです。でもその文面には、疲弊しきった本音がにじんでいました。
作業療法士の仕事は、やりがいがある。それは間違いない。でも「きつい」と感じる瞬間があるのも、また事実。僕は理学療法士として10年以上臨床を経験し、OTの同僚たちと何度も深夜まで語り合ってきました。彼らの悩み、苦しみ、そして乗り越えた話をたくさん聞いてきた。
だからこそ、今きつさを感じているあなたに伝えたいことがある。「きつい」と感じるのは、あなたが弱いからじゃない。環境や働き方の問題であることがほとんどなんです。
「もう無理かも」と思った瞬間、僕の同僚OTに何が起きたか
冒頭で触れた佐藤さんの話を、もう少し詳しくさせてください。
彼女は回復期病院で主に脳卒中後のADL訓練を担当していました。担当患者は常時18人。これだけで結構な負担ですよね。でも彼女を追い詰めたのは、患者数だけじゃなかった。
ある認知症の患者さんから、毎日のように暴言を浴びせられていたんです。「お前なんかに何がわかる」「触るな」。認知症の症状だとわかっていても、人間だから傷つく。それでも笑顔で対応し続けた。
そこに追い打ちをかけたのが、ご家族からのクレーム。
「なぜもっと早く良くならないんですか」「リハビリが足りないんじゃないですか」。毎週のように言われ続けた。回復期なんだから、そう簡単に改善しないケースもある。でもそれを伝えても、納得してもらえない。
そして書類業務。サマリー、計画書、カンファレンス資料。17時に業務が終わっても、そこから2時間は当たり前。サービス残業という名の無償労働。
「あの頃、帰りの車の中で泣いてた」
LINEでそう打ち明けられたとき、僕は何も言えなかった。真面目な人ほど、自分を責めるんですよね。「私の関わり方が悪いのかも」「もっと頑張らないと」って。
でも違う。環境がおかしいんです。
作業療法士が「きつい」と感じる7つの場面
佐藤さんのケースは極端じゃない。むしろ、よくある話なんです。僕がこれまで聞いてきた「きつさ」を整理すると、だいたいこの7つに分類されます。
身体的なきつさ:腰痛と立ち仕事の限界
OTは座ってできる仕事と思われがち。でも実際は移乗介助もするし、ADL訓練で中腰になることも多い。特に回復期や急性期では、1日20単位以上こなすこともザラ。僕の周りでも、30代で腰痛持ちになったOTは珍しくないです。
精神的なきつさ:患者・家族との関係
これが一番多い。特にOT特有の悩みとして、「作業療法って何してるの?」と理解されにくい問題がある。PTみたいに「歩けるようになった」という目に見える成果が出にくい領域もあるから、患者さんやご家族に価値を伝えるのが難しい。
書類業務の多さと残業
計画書、サマリー、カンファレンス記録、各種評価表。地味にこれがボディブローのように効いてくる。しかも診療報酬改定のたびに書類が増える傾向。熊本の地方病院で働いていた同僚は、「臨床より書類の時間のほうが長い日もある」とぼやいていました。
給料と仕事量が見合わない感覚
正直に言うと、僕も20代の頃は「給料安いけど、やりがいあるし…」って自分を納得させてました。でも結婚を考えたとき、それじゃダメだと気づいたんです。OTの平均年収は約420万円。これで責任の重さ、業務量を考えると、割に合わないと感じるのは当然。
人間関係のストレス(特に多職種連携)
医師、看護師、PT、ST、MSW。連携は大事だけど、それぞれの価値観が違うから摩擦も起きる。「OTさん、もっと早くADL上げてよ」とか言われて、イラッとした経験ありませんか? こっちだって考えてやってるわ、と。
成果が見えにくいもどかしさ
「作業」を通じて生活の質を上げる。それがOTの仕事。でもそれって数値化しにくい。PTなら「歩行速度が◯m/分上がりました」と言えるけど、OTの成果は「料理ができるようになりました」「趣味を再開できました」みたいな、目に見えにくいもの。そのもどかしさを抱えているOTは多い。
キャリアの先が見えない不安
5年、10年と経験を積んでも、給料はほとんど上がらない。管理職のポストは限られている。「このまま40歳、50歳になったらどうなるんだろう」という漠然とした不安。これ、30代になると急にリアルになってくるんですよね。
領域別の「きつさ」は全然違う|身体障害・精神科・小児の現場から
「作業療法士はきつい」と一括りにされがちですが、領域によって「きつさの質」がまったく違います。ここ、意外と知られていないんですよね。
回復期・急性期のきつさ
物理的な忙しさはここがトップクラス。患者数が多い、入れ替わりが激しい、書類も多い。急性期だと状態が不安定な患者さんも多いから、リスク管理にも神経を使う。
ただ、成果が見えやすいという利点はある。「昨日できなかったことが今日できた」という実感を得やすい。だから「忙しいけど楽しい」と言うOTも実際いるんです。向き不向きが分かれる領域。
精神科OTの見えない疲労
ここだけの話ですが、精神科勤務のリハ職は離職率が高い傾向があります。厚労省のデータでも、精神科病院の離職率は他の病院より数%高い。
なぜか。患者さんとの距離感が難しいんです。近づきすぎると巻き込まれる。離れすぎると関係が作れない。そのバランスを取り続けることの消耗は、身体領域とはまったく違う。「何もしてないのに、なぜかすごく疲れる」という声をよく聞きます。
あと、暴力リスクも無視できない。男性OTが少ない職場だと、女性OTが怖い思いをすることもある。これ、あまり表に出ない問題。
小児領域の意外な大変さ
「子ども相手だから楽しそう」と思われがち。でも実際は、親御さん対応の負担が大きい。お子さんの発達に不安を抱えている親御さんは、当然ながら神経質になりやすい。その感情を受け止めながら、適切な説明をする。これがかなりのエネルギーを使う。
それと、成果が見えるまでの時間が長い。年単位で関わっても、劇的な変化が見えないこともある。「自分の介入に意味があるのか」と悩むOTは少なくない。
地方だとそもそも領域を選べないという現実もあります。熊本でもそうでしたが、小児をやりたくても近くに施設がない、精神科に興味があっても車で1時間かかる、みたいな。選択肢が少ない中でキャリアを考えなきゃいけない。これも地方OTの隠れた「きつさ」ですね。
僕が見てきた「きつさを乗り越えた人」と「辞めた人」の違い
10年以上この業界にいると、いろんな人を見てきました。きつさを乗り越えて今も楽しそうに働いている人。限界を超えて心身を壊してしまった人。勢いで辞めて後悔している人。
その違いは何だったのか。僕なりの結論があります。
乗り越えた人に共通していたのは、「逃げ場を作っていた」こと。
ここでいう逃げ場は、仕事から逃げるという意味じゃない。心の余裕を確保する場所という意味。趣味でもいいし、家族との時間でもいい。「仕事がすべて」にならない状態を意識的に作っていた人は、きつい時期を乗り越えられていました。
あとは「環境を変える決断ができた人」。
僕の同僚で、回復期から訪問リハに転職したOTがいます。彼女は回復期で5年働いて、もう限界だと感じていた。でも「辞めたら逃げ」みたいな思いもあって、なかなか踏み出せなかった。
結局、転職エージェントに登録して、訪問リハの求人を紹介してもらったんです。給料は少し下がったけど、残業はほぼゼロ。患者さん一人ひとりとじっくり向き合える。「なんでもっと早く動かなかったんだろう」と言ってました。
逆に、辞めていった人の多くは「我慢しすぎた」傾向がありました。
「もう少し頑張れば」「みんな大変だから」「辞めたら迷惑かける」。そうやって自分を追い込んで、ある日突然プツンと切れてしまう。復帰に時間がかかったり、リハビリの仕事自体が嫌になってしまったり。
勢いで辞めた人も厳しい。次の仕事を決めずに辞めて、収入が途絶えて焦って、条件の悪い職場に再就職。「前のほうがマシだった」と後悔するパターン。これ、本当によく聞く話なんです。
どうですか? 心当たりありませんか?
僕が独立して株式会社DOPを立ち上げたとき、最初の半年は月収10万円台でした。臨床に戻ろうかと何度も思いましたね。でもあのとき踏みとどまれたのは、計画を立ててから動いたから。勢いだけで独立してたら、たぶん潰れてました。
「きつい」から逃げるのは悪いことじゃない。でも「どこに逃げるか」は冷静に考えないといけない。それが僕の持論です。
今の「きつい」を変えるための具体的な選択肢
「きつい」と感じているなら、何かを変える必要がある。でも何を変えればいいのか。ここでは3つのパターンに分けて考えてみます。
同じ職場で改善できるケース
まず考えるべきは、今の職場で改善できる余地があるかどうか。
上司に業務量の調整を相談できそうですか? 異動の希望は出せますか? 残業を減らす工夫の余地はありますか?
これらに「YES」と答えられるなら、まずそこから手をつけるのがいい。転職は最後の手段として取っておいて、できることからやってみる。意外と「相談したら配慮してもらえた」というケースもあるんです。
ただ、言っても変わらない職場も正直ある。人手不足で回していて、個人の要望に応える余裕がない。そういう場合は、次の選択肢を考えるタイミングかもしれません。
転職で環境を変えるケース
「今の職場では無理」と判断したら、転職を具体的に検討すべき段階。
ここで大事なのは、「同じ失敗を繰り返さない」こと。なぜ今の職場がきついのか、その原因を明確にしてから動かないと、次も同じような職場を選んでしまうリスクがある。
残業が嫌なら残業の少ない職場を。患者数が多すぎるなら担当数の少ない職場を。給料が不満なら給料の高い職場を。当たり前のことだけど、ここを曖昧にしたまま転職する人が意外と多い。
僕が訪問リハビリに転職したとき、最初の1ヶ月は道に迷いまくりでした。Google Mapが相棒でしたね(笑)。でも移動時間は一人になれる時間でもあって、病棟の喧騒から離れられるのが良かった。回復期の忙しさに疲れていた自分には合っていたんです。
あまり知られていませんが、訪問リハやデイケア、クリニックは比較的「きつくない」傾向があります。もちろん職場によりますが、急性期や回復期と比べると身体的・時間的な負担は軽いことが多い。
転職活動をするなら、リハビリ職専門の転職エージェントを使うのが効率的です。レバウェルリハビリは、PT・OT・ST専門で、残業時間や職場の雰囲気など、求人票に載っていない情報も教えてもらえる。「きつくない職場」を探しているなら、そういう条件で相談できます。無料登録で相談できるし、登録は3分で終わる。今すぐ転職しなくても、情報収集だけでも価値はあります。
OTを続けながら別の道を作るケース
ぶっちゃけ、これが一番リスクが低い選択肢だと僕は思っています。
OTの仕事を続けながら、副業や資格取得で別の収入源やキャリアの柱を作る。うまくいけば選択肢が広がるし、うまくいかなくても本業があるから生活は困らない。
具体的には、介護分野の資格を取ってケアマネを目指す。健康経営アドバイザーの資格を取って企業向けの仕事を開拓する。ライティングやSNS運用のスキルを身につけて発信する。いろんな道がある。
僕自身、臨床をやりながらこのサイト「リハコンパス」を立ち上げました。最初は全然うまくいかなかったけど、少しずつ形になっていった。今の「きつい」が、数年後の選択肢を増やすための投資になるかもしれない。そう考えると、少しだけ気持ちが楽になりませんか。
よくある質問
作業療法士の離職率は高いですか?
医療職全体と比べて飛び抜けて高いわけじゃないです。ただ、3年以内の離職は約20%というデータもあって、特に回復期病院は離職率が高い傾向。僕の周りでも、3年目くらいで辞める人は珍しくなかったですね。
作業療法士で楽な職場はありますか?
「楽」の定義によります。身体的な負担が少ないのはデイケアやクリニック。精神的に落ち着けるのは慢性期や療養型という声が多いです。ただ、どこにもそれぞれの大変さはある。完璧な職場はないと思っておいたほうがいい。
作業療法士を辞めて後悔する人は多いですか?
辞め方次第。勢いで辞めた人は後悔しやすい傾向があります。逆に、次のキャリアをしっかり決めてから辞めた人は後悔が少ない。準備の差がそのまま満足度の差になっている印象。
きつい時に転職を考えるのは甘えですか?
甘えじゃない。環境を変えることで活躍できる人はたくさんいます。ただ、「なぜきついのか」を分析せずに転職すると、同じ失敗を繰り返すリスクはある。逃げることが悪いんじゃなくて、逃げた先を考えないことが問題なんです。
まとめ
作業療法士の仕事がきついと感じるのは、あなたのせいじゃない。環境や働き方の問題であることがほとんどです。今の職場で改善できるならそれがベスト。無理なら転職という選択肢がある。大事なのは、限界を超える前に動くこと。冒頭で紹介した佐藤さんは、結局転職して今は訪問リハで働いています。「あのとき動いてよかった」と言ってました。あなたも、まず一歩だけ踏み出してみてください。
あわせて読みたい
この記事を書いた人
富永康太(元理学療法士)
臨床経験10年以上。現在はDOPグループ代表として、リハビリ職の転職・キャリア支援に携わる。「給料が安い」「転職が不安」——そんなPT・OT・STの悩みに、現場を知る人間として本音でお答えします。
